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ESDツリーニュース(環境教育ニュース)第28号 

ESDツリーニュース(環境教育ニュース)第28号 
発信:PLT 日本事務局 by ERIC 担当 梅村松秀 足立恵理
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「ESDツリーニュース」はPLT(Project Learning Tree 木と学ぼう)関連のニュースを発信し、
PLTに関心を持つ方々、各地でPLTを用いた環境教育を実践されている方々のネットワークを強化し、
持続可能な開発のための教育を目指して、毎月一回ペースで発行しております。
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PLT(Project Learning Tree:木と学ぼう)について詳しく知りたい方はこちら。
  ⇒ http://www.k3.dion.ne.jp/~eric-net/plteric.htm
環境教育の人材育成事業を行っている団体として、環境省のHPに掲載されています。
        ⇒ http://www.env.go.jp/policy/edu/reg/index.html


春の運動会のシーズンを迎えています。
わが集合住宅に隣接する小学校も今週末の本番に向けて日増しにその練習が密度を増していることを、
聞こえてくるミッキーマウスマーチと先生がたの激励の声に実感しています。

ミシシッピ・ジャクソンでのPLTコーディネーター会議に参加してきました。
会合のあと、皆さんと別れアムトラックでニューオルリンズへ移動、あこがれていたジャズの街に触れる機会となりました。
一方でこのルートは、ハリケーンカトリーナの傷跡の大きさを景観の上で確認するとともに、
ディープ・サウスという表現の意味するところを実感する一人旅でもありました。

さて今回は、この5月12日~16日にかけてミシシッピ州ジャクソンで開かれたPLT2008年コーディネーター会議会合の模様、
それを反映しての日本でのPLT研修のあり方に関して日本事務局としての方針の提起、
各地で活動されているリーダーの方からの実践報告の第3回目、
そしてPLT講習会情報とPLTインターン募集に関すること等もりだくさんの内容です。
植林ボランティア報告は休載とします。(梅村)


■□ 28号の内容 □■

1.PLTコーディネーター会議報告                 足立恵理
2.PLT講習会の『より質の高い』あり方に向けて事務局からの提起  梅村松秀
3.各地で活躍されているリーダーの方からの報告(3)        田中利男さん
4. PLT講習会情報 
5. PLTインターン募集に関するお知らせ ERIC事務局運営改善対策チーム


1.PLTコーディネーター会議2008に参加して  足立恵理

PLTコーディネーター会議に初めて参加しました。
「ミシシッピ州ってどこ?」から始まった会議への旅でしたが、会議は参加者の誰にとっても充実した内容になるような工夫に満ちていて、
フィールドトリップや参加者同士の交流もあり、とても濃い4日間でした。
会議の全体像と様子は先週の【速報】で共有されたので、分科会や参加者との交流から見えてきたことを書きます。
以前「教員養成課程にPLTを導入する」で紹介した分科会「Evaluating Pre-service Educator」にも参加できました。

 教員養成課程へのPLT導入を意識的に推進し始めたのは、2002年前後だと思われます。
分科会の内容は、この数年間の取り組みの評価、各州の進捗状況や推進のアイデアの共有などでした。

 進行は事務局Alさんで、将来教師となる教育課程の学生の環境教育推進のモチベーションと目的意識をアップすることにつなげたい、
という目標の確認と、時間はかかるがアイデアを共有しながら進めていこうという提案がありました。
Alさんの「学校に環境教育を導入するバリアは何ですか?」、という 問いかけに、
「コンテンツがない」「ガイドラインがない」「時間」「PLTのようなコンテンツを学校に提供しきれていない」などの意見が出ました
(この辺は日本の現状に置き換えても共通するところがありますね)。
コーディネーターが学校や大学とどう連携の形をつくるかは常に課題ですが、
全体会で表彰された Outstanding Teachers(優れた実践を認められた学校の先生たち)の話を聞いていても、
コーディネーターと先生、関係者間のの密な協力が優れた実践を生み出すカ ギだと感じました。

 Towson大学のSarah さんからは2005年にPreserviceコースのためのPLTワークショップに参加した
教員養成課程の大学教員および関係者を対象に実施したアンケー トの結果が共有されました。
結果からはワークショップの評価も高く、PLT導入にも意欲的なことがわかります。
「このワークショップを同僚や他の大学教授 たちに推薦したいと思うか」、
「学びを実際に教員養成課程の教育者と共有したか」という問いの回答はYes が100%でした。
が、「他の研究科の教育者と共有したか」となるとYesが33%まで下がります。
教員養成課程に限らず科学などの専門領域にも広く呼び かけて、教育が専門ではない学生がPLTに参加する機会をもっとつくろうという話も出ました。

 日本では、先日寄稿してくださった北海道教育大学の能條さんらが大学でPLTを活用してくださっています。
しかし全体としては学校教育と PLTをつなぐ試みはまだ少なく、今後の課題といえるでしょう。
前日にはメキシコではPLTのエデュケーターの99%は学校の先生だと聞いて驚いたのです が、
会議の場に参加して、メキシコとも米国とも違う日本の推進の特徴と課題が浮き彫りになってくるように感じました。
日本の現状についてはわたしから簡単 に共有させていただきましたが、目指すところは共通しているので、
それぞれの実践からたくさん学びあえることがあると感じました。

 取り組みのアイデアとしては、もっと学生にコミットさせる、教員養成課程の学生が子どもに教える機会をカリキュラムに組み込む、
教える側のスキルアップなどが挙げられていました。
そんな実践をしている、知っている、あるいはこれから考えているという方はぜひPLT日本事務局までお知らせください。


2.PLT講習会の『より質の高い』あり方に向けて事務局からの提起  梅村松秀

今年度のPLT年次大会に関しては、すでに角田さんそして今回の足立さんによる報告などに示されましたが、
ジャクソンでの大会最終日、日本事務局として取り組むべき課題について、私たち3人が話し合いをもち、角田さんが次のようにまとめられ課題提起されています。

角田さんによるまとめと課題提起

 今年度PLTの中心課題は、昨年に引き続き「ベストマネジメントを実践するための自己評価の推進」であり
「模範的なプログラムの主導」を含む総体としての‘Pathways to Performance’=「パフォーマンスへの導き」と称すべきことである。
日本におけるPLT活動が「パフォーマンスへの道」をともに進めるための課題として

* ERIC事務局およびこれまでの会議出席者とのミーティングの開催
* 「パフォーマンスへの道」「教員養成課程への導入」など、ファシリテーターハンドブックに入れること
* PLTリーダーとして各地で活躍されている方々によるリーダー会議の開催
* ERICにおける持続可能性教育の内容と質との関係強化
と、整理されました。これをうけて、課題についての具体的取り組みのいくつかを現状報告とともに記します。
* 新しいPLTパンフレットの作成(最後の段階に入っています)
* テキストについて、これまでの『PLT 木と学ぼう PreK-6ガイド』とあわせて、
最新のアクティビティを翻訳・収録した『Introductoryモジュール』の活用をお願いしています。
* PLT講習会開催に関して、これまでの開催申込書とあわせて事務局との間で開催に関する覚書の提出をお願いすること、
書式完成しだいツリーニュースまたはリーダーの方々へ直接ご連絡を差し上げたいと思います。
* PLTファシリテーターハンドブックの作成とその提供について

これまでのファシリテーター・ハンドブック(米国環境教育事情)に変わるものとして新しいPLTファシリテーターハンドブックがまもなく完成します。
これはリーダーの方々には電子状態で提供され、内容としては、大きく
ワークショップの教授方略/ワークショップ開催に関する計画/ファシリテーターの専門性向上の3部構成で、さらに
□ PLT Annual Report 2007 / Facilitator Handbook, English、日本語/ Hike
Through the Guides/ Agendas for Workshops/ May Conference Report,
English、日本語などが含まれます。また上に記した PLT講習会開催に関しての
「ファシリテーターと事務局との覚え書き」書式など、リーダーの方々には必携
のハンドブックになることでしょう。


3.各地で活躍されているリーダーの方からの報告(3)〜田中利男さん

前項で記されたことでもありますが、私たちが抱えている課題のひとつは、各地
で活躍されているリーダーの方々がより質の高いPLT活動をめざすことへの具体
的な方略を提起していくことがあります。全国的な広がりを示すようになった
PLTリーダーの方々による実践報告は、方略提起の上で重要な手がかりとなりま
す。今回は大阪を中心に活動されている日本型環境共育推進協議会の田中利男さ
んにご報告をお願いしました。

「心がけていること、その他(課題等)について」日本型環境共育推進協議会 
田中利男

私たちの暮らしの中で、過去と現在でどのような変化が生じているのかを考えた
とき、ほんの少し前まで親や周りの大人たちが普段の生活の中で教えてくれてい
たもの、例えば「ものを大切にする」「食べ物を粗末に扱わない」「弱いもの
(小さな生き物や草花を含む)をいたわる」「互いに助け合う」といった事柄
を、今では大人であるわたし達の多くが実践できていないという現実に直面しま
す。そのことと、身の回りで起っている様々な環境問題は密接に関連しているの
ではないでしょうか。植物観察会のときに周りの人を押しのけて自分が観察でき
ればそれでよしとする大人、登山道に散らかる無数のゴミ、傷つけられた小動
物、そしてテレビでは大食い選手権や社会的弱者を傷つける痛ましいニュース報
道など。わたし達を取り巻く環境は多くの不必要な情報で溢れかえり、そしてそ
の一方で大切な何かが足りていないのではないか、と感じずにはいられません。
私たちの活動団体は、その『足りていない何か』を環境教育をとおして子どもた
ちに伝えていく、という目的があります。

『環境教育とは(自然)環境を守る生き方を学ぶ教育である』と言われる方がい
らっしゃいますが、私は(自然)環境を守るというより、まず(自然)環境から
生き方を学び、そのことを生活にむすびつけることが環境教育の目的であり、命
を慈しむ心を育むことにつながるのではないかと考えています。

すなわち、単に自然の中での体験活動をとおして自然界の原理原則を伝え理解し
てもらうということだけでなく、『足りていない何か』かも知れない他者を『敬
う心』や『思いやる心』を育むため、子どもたちへの愛情や『自然を愛でる心』
=*『自然観』*を、指導者自身が持つことが何よりも必要なのではないかと思う
のです。

四季の移ろいを肌で感じながら様々な文化や素晴らしい芸術を世に残してこられ
た先人たちには、共通して「生きるということは自然を敬い自然とともにあるこ
とに他ならなかった」という謙虚でありながらも力強く、かつ創造的な精神が
宿っていたように思います。ですから、俳句や絵画、建築物から食べ物に至るま
で、彼らの業績や作品に触れることは自然を敬い自然を取り入れ、自然の営みに
学びながら生き方に繋げてきた知恵の根底にある『自然観』を学ぶことにつなが
るのではないかと思うのです。つまりそれらの自然観、いわゆる『日本的自然
観』を根幹とした『日本型環境共育』の実践をとおした子どもたちとの共育活動
は、まさに生き方を学び、命を慈しむ心を育むことにつながり、『環境教育活
動』の目的そのものだと考えるのです。

 PLTやPWやネイチャーゲームなど、優れた環境教育プログラムの多くは米
国で生まれたものが多くを占めます。ですからそのまま活用するのではなく、地
域の自然やフィールドの歴史等の情報を加味しながら活用しています。そして、
『生態系の繋がり』=『命の繋がり』を体験活動により実感することで、現在
起っている環境問題の多くが『繋がり』の分断に原因があることに改めて気づ
き、自然から生き方を学ぶ活動にむすびつける様に意識しています。

 とは言え、そんな難しいことを伝えるのではなく、伝統文化の体験や伝承遊
び、もしくはパッケージドプログラムのアレンジによる体験学習を中心に活動を
行なっています。今後は田んぼをフィールドにした活動も念頭に入れながら、我
々一人ひとりのスキルアップも図っていく必要があると考えています。しかしな
がら、どのような活動のためにどのようなスキルアップを図るのか、という点が
不明確であり、その点を明確にしていくことが活動の充実と目的の達成に繋がる
と考えており、今後の課題だと考えています。


4. PLT講習会情報

6月以降のPLT講習会に関する情報です。

1.名称:環境教育プログラムPLT−一般指導者養成講習会
 主催者:石川県立金沢桜丘高等学校
 開催地:石川県立金沢桜丘高等学校
 日時:5/10、6/14、10/4、10/25(計12時間)
 対象:子ども達に環境教育をしたいと考える方どなたでも(18歳以上)
 参加費:3000円(テキスト代等)

2.名称:第2回PLTファシリテーター養成講習会in玉川大学
主催者:玉川大学学生環境保全委員会
開催地:玉川大学
日時:6月14日
 対象:大学生(PW,WETエデュケーター資格既取得者)
 参加費:7000円

3.名称:森林環境学習指導者養成・実践セミナー
 主催者:大分県立九重青少年の家(大分県教育委員会)
  開催地:九重青少年の家
 日時:6月14日~15日
 対象:成人で、3回を通して参加可能な人
 参加費:各回3000円 ほかにテキスト代

4.名称:森の家みんみん環境教育セミナーPLTリーダー養成講座
 主催者:那覇市立森の家みんみん(NPO法人 エコ・ビジョン沖縄)
 開催地:那覇市立森の家みんみん
 対象:一般募集、PW,WETエデュケーターをも対象とする
 日時:6月21日〜22日
 参加費:15000円

5.名称:ERICファシリテーターズカレッジ「環境教育」
 主催者:ERIC
 開催地:東京
 対象: 環境教育プログラムとしてのPLTに関心のある方およびPLTリーダーの方々
 日時:7月19-20日
 参加費:20000円

詳細はそれぞれ開催者にお問い合わせください。


5. PLTインターン募集に関するお知らせ

ERIC事務局が1992年から引き受けているPLT『木と学ぼう』環境教育。その推進
体制が、2006年の大改訂以来、毎年の改訂、そしして新しいモジュールの出版
と、日本事務局の推進体制そのものを変えていく必要が生まれてきています。昨
年、2007年度は『エネルギーと社会』『Outdoors 20』『Places We Liveわたし
たちの住んでいる所』などの翻訳出版およびIntroductoryの改訂・増刷などを行
うことができました。PLTは米国でも「優れた環境教育」として何度も表彰され
ている教材ですが、その優れたところは三つあります。

・教授法の優秀性 協同学習・経験学習・スキルの指導などが、取り込まれてい
ること。

・カリキュラムの広がり 初等中等教育を対象にした96のアクティビティ+α中等
教育のモジュールが、環境教育の幅広い分野をカバーしています。

・ 継続的改善 1976年の初版は、1993年に概念の柱を新たにして大きく改変さ
れ、その後2006年の大改訂を経て、毎年よりよい質を目指して改訂が続けられています。また北米環境教育連盟の「ガイドライン」を遵守することを最初に宣言
した団体でもあります。

ERICでは、翻訳のための助成金、研修開催のスポンサーなどを探してはいます
が、これまでのところ、有望な助成団体は見つかっていません。これまで通りの
推進体制を継続しつつ、新たな展開の可能性を探る必要があります。優れた環境
教育の推進に関心のあるインターンを、募集いたします。

【インターンの活動内容】
・ PLT研修のコーディネーション
・ PLT研修プログラムの質的向上
・ PLTファシリテーター・リーダーとのネットワーク推進
・ PLTの広報
・ 年に一回、米国で開かれるPLTコーディネーター会議への参加

【インターン期間】
最初の三ヶ月を試用期間とし、一年の契約とする。

【給与】
インターンとしては基本的に無給です。ERICの受託研修事業のマネジメントを業
務としてハーフタイムで行っていただける場合は、アルバイト代を出すことが可
能です。(時間給850円、週2日から3日程度、業務量による)

ERICのファシリテーター養成研修の修了状況によっては、インターン期間後に
「ERICファシリテーター」として、契約をすることは可能です。

【履歴書送付先】
履歴書および志望の動機、推薦人、「PLT推進のための活動計画」を、ERIC事務
局にご送付ください。
by ericnews | 2008-06-01 07:00 | ■Tree News:環境教育


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